グローバル行事
エストニア文化研修を実施しました
今夏、国際学級の生徒(希望者)を対象とした海外研修「エストニア文化研修」を初めて実施しました。初回となる今年は、2025年7月21日(月)〜7月31日(木)の11日間の日程で、中学2・3年の計18名が参加しました。
エストニアは、北欧のバルト3国のうち最北に位置する小国ですが、PISAランキングでトップクラス常連の教育大国であり、特に「アントレプレナーシップ教育」に国をあげて取り組んでいることが特筆されます。「アントレプレナーシップ」という言葉は、日本では「起業」とほぼ同義語として使われますが、本来はもっと広く「社会の課題を見つけて解決を目指す主体的な姿勢・行動」といった意味を持ち、エストニアの教育はまさにそのようなマインドと行動力を身につけるために行われています。その結果として実際にスタートアップ企業がとても多く、国民一人あたりのユニコーン企業(企業評価額10億ドル以上のスタートアップ企業)が世界でいちばん多い国と言われています。また、首都タリンの旧市街は世界文化遺産に登録されており、豊かな歴史と文化を併せ持っています。
本校の海外研修はすべて、単なる語学研修ではない、「人と人との触れ合い」、文化交流に主眼を置いていることが特徴です。このエストニア文化研修では、英語をツールとしてエストニアの人々と触れ合い、様々なワークショップやプレゼンテーションを通して真のアントレプレナーシップを学び、グローバル・マインドセットを育成することを目的として実施しました。以下、参加生徒による文章を日録風に掲載いたしますので、生徒たちの目線を通して現地での活動の様子をご覧ください。
なお、今回このエストニア文化研修を企画・実施するにあたっては、エストニアと日本を繋ぐ事業を手がけているNext innovationの皆様と、同社に所属する本校の国際学級の卒業生に多大なご協力・ご支援をいただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
1・2日目

7月21日(月)夜に羽田空港を出発し、 フィンランド・ヘルシンキを経由して、日本時間の7月22日(火)15:00にエストニアの首都タリンに到着しました。
最初の目的地であるサーレマー島には、タリンからバスとフェリーを使い、およそ3時間半ほどかけて向かいました。サーレマー島にある古城クレッサーレ城で、ガイドさんの英語案内を受けながらエストニアやサーレマー島、クレッサーレ城の歴史について学びました。
クレッサーレ城から徒歩5分程のイタリアンレストランで海鮮パスタを食べて、帰寮前にスーパーマーケットに寄り、海外での買い物の仕方に戸惑いながらも日用品を購入しました。今回泊まる寮は、サーレマー島の学生たちも利用する寮で、質素な設備のなかで海外での寮生活を疑似体験します。
明日は、サーレマー市長への表敬訪問、サーレマー高校の生徒会のみなさんとの交流、クレッサーレ城でのオペラ鑑賞が待っています。
3日目

7月23日(水)、エストニア文化研修3日目の最初は、サーレマー市長への表敬訪問!
私たちの日本と学校に関するプレゼンテーションの後、市長がサーレマー市についてと市長自身の生い立ちなどをプレゼンテーションしてくださいました。市長の仕事、その仕事を全うするためのマインド、人生観について学ぶことが多くありました。
その後、サーレマー市内のお店で、ウクライナのボルシチを食べました。さっぱりしていて少し甘かったです。次に、サーレマー高校の生徒会長さんらとワークショップ&プレゼンテーションを行いました。生徒会長の話を聞いて、女学館とサーレマー高校の違いが沢山あることがわかりました。サーレマー高校では行政と協力しながら行うイベントの実施や、他校の生徒会との交流があるそうです。
生徒会長のプレゼンが終わると、サーレマー市の地域の方々との交流会をしました。ここでは自由に色々な人達と話すことができ、楽しかったのですが、なかなか英語が通じなかった人もいたようで、むしろ英語の学習に対するモチベーションになったそうです。
夜ご飯はチキンを食べました。レストランにデザートが売っていて各自で好きなものを食べました。私はpaulovaというメレンゲにクリームとフルーツがのっているお菓子を食べました。
夜はサーレマー市オペラフェスティバルを観劇しました。こちらは事前に話の内容を調べていたことと、舞台横に英訳が映されたスクリーンがあったことからとても面白く観ることが出来ました。とても濃い1日でした。
4日目

7月24日(木)、昨日は夜10時くらいまでオペラがあったので、10時半に集合しました。11時くらいにタリン工科大学サーレマー校に着き、Merit Kindsigo学長と対談しました。大変学びの多い時間で、人生観や仕事観、リーダー観に至るまでとても示唆に富んだお話を聞くことができました。
ランチにはサーレマー島で有名なハンバーガーを食べました。
午後は夕食の際に行う中間プレゼンテーション(テーマは「エストニアに来て学んだこと・またその本質」)の準備をしつつ、自由時間をそれぞれ楽しみました。プレゼンの題材は街中にもあるというコンセプトで、自由に街を探検しながら発表のネタを探していきました。中には海辺でゴーカートをする人もいれば、図書館に行く人もいました。
その後は7時に集合場所のレストランに集まり、夕食を取りつつプレゼンテーションをしました。皆最初の頃より意識が変わっていて、それぞれが成長しているように感じました。
5日目

7月25日(金)、今日からサーレマー島を離れ、首都タリンに向かいました。数日間とはいえ、様々なアクティビティを行った場所を離れるのは名残惜しかったです。行きと同じようにフェリーとバスでタリンまで向かいました。
お昼ご飯はMonaというおしゃれなカフェでサラダを食べました。鶏肉が沢山入っていて食べ応えがあり、様々な野菜が入っていたので彩り豊かでした。もしも皆様の中にタリンに行く人がいらっしゃるなら、ぜひ食べてもらいたいです(*´꒳`*)
そのあとはスマートシティ(AIなどの先端技術を駆使して都市の課題を解決し、持続可能な都市生活を目指すもの)を訪問しました。ここはかつて工場地帯だったため、今は新しい建物と昔ながらの建物が調和するようにデザインされています。
ここには会社、幼稚園、学校、大学、病院、カフェ、スーパー、娯楽施設など様々な施設があります。ここに通う人たちがより良いものを生み出せるよう、様々なところに工夫があります。例えば、この辺りの地面にはグリーンの線が引かれていることがあるのですが、それはミーティングをしている人たちがより様々なことを考えられるよう(=脳が活性化するよう)、ウォーキングをしながらミーティングを行えるようになっています。ちなみに、この線は一周分がちょうど20分になるように設計されているそうです。世界中の優秀人材を集め、健康で効率的に仕事をしてもらうための街です。少子高齢化を迎える日本社会もスマートシティを導入すべきだと感じました。
スマートシティからホテルに帰り、少し休憩した後は食事だと思っていたのですが、ここでサプライズでミッションが与えられました。テーマは「日本人がエストニアに来た時、どのような情報がありがたい?」というものです。それを知るためには、現地の方々と話して情報や手がかりを見つけなくてはいけません。そのためにショッピングモールへ行ったのですが、広すぎてとても1時間半くらいでは見つかりそうにありませんでした。でもそれぞれの英語力で、全ペアどうにか内容がかぶらずに発表することができました。
その後の夕食はまさかの日本食! ラーメンとうどんの中間くらいの麺の味噌ラーメンを食べました。とても美味しかったので、折り返し地点でぎりぎりホームシックにならずにすみました。明日はタリン旧市街に行きます。どんなものがあるのか楽しみです♪
6日目

7月26日(土)、今日はエストニア研修6日目でした。午前中はEUに関する展示をしている博物館に行きました。ここの展示は全てデシダルで展示されていてとても近代的でした。中ではプリントが配られ、その答えを展示の中から各自で調べて解くものだったので、体験型で楽しく学ぶことができました。また、エストニアは男女や年齢の関係をなくしているため、EUの議員には日本とは違い幅広い年代層の人、また女性の方も多くいて、日本との違いに驚き、日本もこうなったらいいなと思いました。ちなみにEU議会には2001年生まれ・25歳の女性議員(オーストリア出身)がいます。
午後にはタリン旧市街の散策と、ショコラティエでチョコ作りをしました。タリン旧市街は昔ながらの洋風の街並みがとても素敵で、物語に出てくる街のように美しかったです。事前にタリン旧市街の観光名所をみんなで下調べしていたので、お互いに場所の説明をしながら観光をしました。事前に調べたことで、ただ見ただけではわからないその場所の歴史を学びながら巡ることができ、ただ観光するだけではなく自分の知識を増やすことができました。
夕方に行ったチョコレート工場で、そのチョコレート工場の起業家の女性から自身の生い立ちやカカオについてのお話を聞きました。この女性起業家の方は、もともと企業に勤めていましたが、何かが人生で足りないと感じ、40歳でショコラティエを起業しました。何歳になって挑戦しても遅すぎるということはないという言葉が印象に残りました。
カカオについての話ではカカオの産地や種類について伺いました。産地の違うカカオの試食もさせていただき、チョコレートはカカオの濃度の違い以外は全て味にあまり関係ないと思っていましたが、産地によって全然味が違いとても驚きました。チョコレート作りの体験もさせていただき、トリュフチョコを作りました。ガナッシュの周りにチョコをコーティングするのが難しく、作るのに苦戦しましたが、自分でガナッシュに好きなスパイスを入れてみたり、ココナッツパウダーやドライフルーツなどをトッピングしたりして自分オリジナルのチョコレートを作れ、良い思い出となりました。私はチョコレート作りをとても楽しみにしていたので、本当に楽しく思い出に残った1日でした。
残りの3日間も、たくさんの学びを得て頑張りたいと思います。
7日目

7月27日(日)の朝は、カドリオルグ宮殿から始まりました。この宮殿は帝政ロシア時代のピョートル大帝が妻のエカテリーナのために建造した離宮です。余談ですが、バロック様式の立派な宮殿にもかかわらず、一度もエカテリーナは訪れたことがないそうです。
ここでもこの研修の定番、テーマが与えられた緊急フィールドワークが行われました。テーマは、「日本人が聞けて嬉しいカドリオルグ宮殿の情報」でした。宮殿内のカドリオルグ美術館では、観光客の方や、警備員の方、お土産屋さんの方への聞き込みをしました。話したことのない人に話しかけるのは最初はとても緊張しましたが、次から次へと話しかけて行くと、だんだんと慣れてきて、緊張も解けました。日本人の方がいて話しかけた時にはとても嬉しく、海外にいても日本人と繋がれることが感慨深かったです。
今回この研修を統括してくださっているNext Innovationの社長であるKeyさんに直接プレゼンし、丁寧なフィードバックをいただきました。足りないフィールドワークに対してしっかり指摘をいただき、悔しいと思った友達はさらにフィールドワークを重ね、プレゼンに深みを付けるために努力している姿が印象的でした。
午後はタリン旧市街で再びフィールドワークを行いました。自由時間も兼ねながら、日本人にエストニアの魅力を伝えるための情報を集めにいく形式でした。三姉妹というホテルを見たり、パットクリ展望台に行き、タリン旧市街の街並みを見ました。街並みは映画『魔女の宅急便』にとても似ていて、すごく綺麗でした。タリンにいるのは残り3日ですが、タリンの街並みや、エストニアの魅力などを目に焼き付けて、充実した研修にしたいです。
明日は、いよいよエストニアの魅力を日本人に伝えるプレゼンがあります。Keyさんのお知り合いの日本人経営者の方にもプレゼンを評価していただき、最終的に上位3名は明日の夕食のメニューが自由に選べるというバトル形式です。俄然みんなのやる気も高まっています。
8日目

7月28日 (月)です。今日は最初に在エストニア日本大使館に行き、参事官次席、ならびに書記官の方にお会いしました。日本大使館がエストニアでどのようなお仕事をなさっているのかお話をお伺いし、逆に私たちがこの研修で何を学んだかについてお伝えして情報交換をしました。
次に Fotografiskaという写真美術館に併設されているレストランに行ってパスタ作りをしました! このレストランは庭園で栽培されている植物などを使ったり、生ごみを再利用したりしていてミシュラングリーンスターを3年連続獲得しています。パスタ作りでは麺とソースをみんなで分担して作りました。実際に作った物を食べたのですがとても美味しかったです。食べ終わってからケーキをいただきました。エストニアのケーキは量が多く重くも感じましたが、ホワイトチョコが使われていたり、ブルーベリーやラズベリーなどのフルーツが乗っていて美味しかったです! エストニアは北方にあるため寒冷で、寒さに強いベリー系の栽培が盛んになったという背景がありましす。
食後は同じ建物にある写真展でElliott Erwittなどの有名な写真家の様々な写真を見ました。その後、各自自由に観光したり、プレゼンのためのインタビューや情報収集をしてから夕食を食べました。ハンバーガーのようなものにエビフライとキムチが入っていて美味しかったです! ちなみに昨日のプレゼンで上位3名に選出された子たちは、インセンティブとして自由にメニューを選ぶことができました。誰もが次の最終プレゼンでよりよい発表ができるようにモチベーションを高めたことでしょう。
明日は実質最終日でプレゼンテーションもあるので悔いのないように頑張りたいです。
9日目

7月29日(火)、実質的な最終日です。11:30にロビー集合で、それまでは休憩してもいいし、お土産を買ってもよい時間でしたが、人によっては制服を着て街にリサーチに行った人もいました。日々アントレプレナーシップ教育の刺激を受けるなかで、前向きにリサーチ活動する人が増えました。
昼食後は、宿泊ホテルの10階会議室を貸し切って、エストニアの有名投資家であり起業家であるJÜRI KALJUNDI(ユーリ・カリユンディ)さんのお話を聞きました。スタートアップの世界では、何かいいアイデアがあっても他の人がすでに考えていることがありうるので、とにかくクイックディシジョンをしないといけないというお話、中高生の間からお菓子販売をしてスタートアップの練習をすることがいい、また人間よりもより良い選択をしてくれるのがAIでシリコンバレーで最も関心が向けられているというお話が印象的です。質疑応答でもユーリさんは大変丁寧に答えてくださいました。
実はユーリさんは毎年9月20日に世界中で一斉に地球を清掃するというWorld Cleanup Dayという国連企画の創始者で、今や国連加盟国の90%以上で行われている活動を運営しています。そういえば、タリンは街のいたるところに緑があり、都市と自然が共存している街だと改めて思い出した。自然を大切にする心は日本人にも通じるところがあると思いました。
ファイナルプレゼンテーションを前に、女学館の先輩である並木さん(今回のエストニア研修を女学館に導入してくれた方)が、自己紹介と女学館生へのメッセージをプレゼンしてくださいました。自分の頭で考え抜く活動、本質を学ぶ活動、先生と生徒のコミュニケーションを深め、それぞれが過ごしやすい学校生活を自分たちで追求していくことを教えてくださいました。
そして最後に5分ずつファイナルプレゼンテーションを行いました。とても緊張しましたが、みんなこの9日間の活動を振り返るように全力でプレゼンをしていました。友人たちの発表内容にそれぞれ学ぶべきポイントがあり、とても参考になりました。これからどのようなフィードバックがいただけるか楽しみです。
実質最終日ということもあり、タリン旧市街にある「Lee」というミシュラン認定レストランに行きました。フルコースでシェフ自慢のエストニア料理を堪能することができました。この研修を通して本当に食事が常に美味でしたが、最終日にふさわしい豪華なコース料理をいただくことができました。
10日目

7月30日は帰国日です。エストニアの首都・タリンからヘルシンキへ向かい、そこから12時間30分かけて日本へ帰国しました。よく晴れており、機内から景色が綺麗に見えました。
エストニア文化研修を運営してくださったNext Innovationの皆様をはじめ、多くの皆様に支えられた研修でした。お別れが名残り惜しかったです。最後にマリオのたまごのお土産をいただきました。研修に参加した私たちを金の卵と言っていただきました。
アントレプレナーシップ教育を受けて自分から情報をリサーチすることが自然と身についたので、ヘルシンキ空港で日本でなわとび大会に参加するベルギー選手団にインタビューをする子たちもいました。
思えば、エストニアにはマクドナルドやスターバックスのようなアメリカ企業も少なく感じ、なぜだろうという疑問も生まれました。知れば知るほど知りたいことが増える、そういう研修でした。